2017年1月15日日曜日

寄稿文『旧世紀エヴァンゲリオン FAKE GENESIS EVANGELION 鋼鉄の宴』第八章後半

第八章後半

 ミハイル・イワノヴィッチ・ロボフは、巡洋艦「キーロフ」対艦レーダーに映った2隻の大型艦の艦影が、彼の予測した戦艦では無く、空母であったことを双眼鏡で確認しても、顔色を変えなかった。ミハイルの座乗する巡洋艦「キーロフ」は、ソビエト連邦が保有する新鋭の巡洋艦である。

基準排水量 七七五〇トン
全長    一九一・四メートル
最大幅     一七・四メートル
主機     アンサルド式ギヤードタービン二基
軸数     二
速力     三六ノット
航続距離   一八ノットにて三七五〇カイリ
兵装    一八センチ三連装砲三基
      一〇センチ単装高角砲六基
      三七ミリ単装機銃一〇基
      五三センチ三連装水上魚雷発射管二基
      機雷一〇〇個

 これに加えてアメリカ製の対水上SGレーダーとイギリス製の281型対空レーダーを装備している。
 また、「キーロフ」の後に続く随伴艦も、ストロジェヴォイ級駆逐艦やミンスク級嚮導駆逐艦等の有力艦揃いである。
 ポリシェビキ革命後の混乱、今も続くシベリアでの日本との紛争、更には昨年やっと休戦協定が結ばれたナチス・ドイツ等との戦争の影響により、未だ充分な戦力を揃えるに至っていないソビエト海軍がこれだけの艦隊を編成できたことは、奇跡と言っても良いだろう。実際、
「国連軍太平洋艦隊の艦艇のうち巡洋艦以下の小型艦艇は全てソビエトが提供する。」
 というソ連の提案は、当初どの国からもブラフとして認識されていた。どの国も、ソビエト海軍にそのような余力は無いと見ていたのだ。
 ところがスターリンは北方艦隊を中心に、バルト海、黒海、太平洋の各艦隊から虎の子の新鋭艦を強引にかき集め、真珠湾に送り込んでしまったのである。
 スターリンはこの荒技によって、ソビエト連邦軍がもはや陸軍と空軍だけの軍隊では無いという事を資本主義諸国にアピールしたのだ。
 しかし、ソビエト海軍にはもう一つの悲願があった。
 帝政ロシア時代に屈辱的な敗北を受けた大日本帝国海軍への復讐、ワンサイド・ゲームで日本の連合艦隊に敗れたバルチック艦隊の敵討ちである。
 「キーロフ」を旗艦とするソビエト艦隊は、日本海海戦を攻守逆転した形でやり返す、まさにその為に、米国の戦艦二隻の護衛任務を放棄し、敵戦艦部隊に突撃してきたのだ。

 並の指揮官であれば、なぜ戦艦の主砲の射程圏内に空母がのこのこと姿を現したのかと疑問に思い、攻撃を躊躇したであろう。しかしミハイルは良い意味で、「並の指揮官」では無かった。
 理由は不明だが、日本軍は空母を囮にしてまで米国の戦艦部隊を叩こうとしている。しかし、例えこの二隻の空母がこちらの注意を引きつけておくための囮だったとしても、これをソビエト海軍の手によって撃沈すれば、充分な宣伝となり得る。帝国主義者同士の戦闘なぞに、貴重なソビエトの軍艦や水兵達を危険にさらす必要性などどこにも無いのだ。
 ミハイルは、空母二隻を攻撃するよう命じた。

 参考文献(副読本)

『影の艦隊』      山田正紀  (著)   徳間書店

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