第10話「虹色のおとめ」
ある朝、またしても遅刻寸前のいちごとあおい。なんと今朝は蘭も遅刻ペース。
「おかしい……私は遅刻キャラじゃなかったはず……」
そんな三人の目の前で、一人の生徒が校舎前の広場の噴水に転落する。腰掛け程度の高さまで周囲を囲われている噴水になぜ転落する?と疑問に思いながらも手を貸し引っ張り上げる蘭。事情を聞くと、水しぶきが作り出す虹を手でつかもうとしていたら「ぼちゃ~ん!」したという。
「ありがとう、おとめ感激!ぺこぺこり~ん」
タオルを差し出すいちごへの感謝の言葉も独特だ。その時あおいが気付いた。このびしょ濡れの少女は、
有栖川おとめ。天真爛漫な性格と独特の言葉づかいが大衆にウケ、第17回全国ポップガールコンテストでグランプリを獲得し、その後
“ポップンポップコーン”、
“ウキウキポップキャンディー”、
“キャピっと冷やしてヒエヒエアイスバー”など、主にお菓子・スイーツのCMに数多く出演している。おとめは別のクラスだったため、これまで三人はあまり見慣れていなかったのだ。
さて、次に訪れたオーディションは、クリスマスイブの日に開催される学内クリスマスパーティのための特設ステージ出演オーディション。しかしこのステージに立てるのはなんと三人だけ。既にその日に学外での仕事のオファーがある生徒を除けば、ほぼ全生徒が参加するという非常に厳しいオーディションだ。トーナメント形式で、二人が同時にステージに立ち、どちらがより観客を盛り上げたかで勝者が決まる
“対決ライブ”形式だ。そしてなんと、いちごの一回戦の相手は、有栖川おとめ。
おとめは芸歴もいちごより長く、いちごと同じく天然キャラ同士、そして普通ならくじけそうなところでもまったくへこたれない強さも持ち合わせるおとめとの対決に、心配を露わにするあおいと蘭。しかしいちごは、CMキャラそのままのかわいさに胸打たれ、おとめとの対決を楽しみにしていた。