2017年7月1日土曜日

飽きたら終わりだ!アイカツ!感想。第7話「つぶやきにご用心」

第7話「つぶやきにご用心」


 ITの進歩はアイドルの活動も変える。ファンとの交流はアイドルの生命線、SNSの登場は距離感の近い交流を可能にした。
 特に“キラキラッター”は140文字程度の「つぶやき」を投稿したり、他者のアカウントに「リプライ」を送ったりできる、手軽なコミュニケーション・ネットワーク機能が受け、今や人気アイドルは“キラキラッター”にアカウントを持つのが普通となった。それは女性アイドルに限らず、例えばオリコン上位にも食い込む男性インディーズバンド“More Than True”のリーダー・NAOのアカウントなどは、大変なフォロワー数を誇る。
 せっかくなのでと、情報強者のあおいにキラキラッターを設定してもらったいちご。初めはおもしろみが分からなかったが、太田のアカウントからリプライが来たり、フォロワーが増えたりと、徐々に楽しみを見つけていく。一方蘭は「あたしは、ネットで誰かとつながってたいとは思わない」と、クールなスタンス。






 「じゃじゃーん!!」
 ある日、居室であおいがいちごに見せたのは、“ポンポンクレープガール”のポスター。有名クレープ店「ポンポンクレープ」のキャンペーンガールは、初代から現在まで皆のちに大成し、そのことから「新人アイドルの登竜門」とも言われる。神崎美月も空白の一年間からの復帰直後、第12代目ポンポンクレープガールオーディションに合格しポンポンクレープガールを務め、これがアイドル・神崎美月の名を世に広く知らしめるきっかけとなった。
 そんな少女の夢、ポンポンクレープガールのオーディションが開かれることとなり、あおいといちごは大興奮。しかしオーディションは11月19日。ちょうどその日は、いちごが既にエントリーした、VIVID GIRLオーディション(ファッション雑誌『VIVID COLOR』のモデルを決める)と同日だった。あおいはエントリーを決めるが、なんと蘭もエントリーしたという。
 
 蘭の実力とプロ意識の高さを知るあおいは気が気でない。さらに蘭は“アピールポイント”の高い“レアドレス”も持っている。オーディションにおいてアピールポイントの高さはパフォーマンスの得点をそのまま底上げし、順位に直結する。
 同じ日のオーディションに向けて、いちごもあおいと一緒に特訓。しかし、ウォーキング練習だけでは不安なあおいは、キラキラッターで特訓についての情報収集をする。そしてあおいが見つけたのは、初代ポンポンクレープガール・如月きららがやっていたと言われる、平均台の上でモデルウォークをする特訓、「10センチの宇宙」。日頃地面に引いている白線と概ね同じ幅の平均台であっても、高さに動揺してしまうと美しいウォーキングは出来ない。
 それだけでは飽き足らず、不安からあおいは食事中にもアイカツフォンが手放せず、どんどん怪しげなキラキラッター情報を収集してしまう。
 
 「で、どうしてこうなった……?」

 いちごが寮に戻ると、部屋がとんでもないことになっていた。壁紙が花柄に変わり、ダルマの目にはパワーストーンがはめ込まれて、観葉植物の鉢植えが対象に配され、壁には何か文様が描かれている。そしてアロマオイルの香りが漂う中、ピラミッド型の骨組みの中心で座禅を組むあおい。
 「ゼラニウムとラベンダーは、人気が出るようになる香りなんだって。南に火のエレメントの赤い色のものを置くと、人気運が上昇するんだ。そしてタイガーアイはあらゆる幸運を呼び、ラピスラズリは頭がよくなって決断力を高めるパワーがある。自然のパワーが凝縮されている観葉植物を利用すれば、さらに運気アップ、そして自然のパワーが浄化作用をもたらすの。花柄も同じ。タイチーマークは万物二元陰陽を表していて、あらゆるものの中心で……」

 その後も、怪しげな情報に踊らされ、いちごもほったらかしでひとりレッスン室で特訓に励むあおい。そんなあおいを、窓の外から見ている人がいた。これまでもときどきいちごが世話になった、掃除のお兄さんだ。

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 当日、VIVID GIRLオーディションは学外で行われるので、いちごは朝から出かけることになる。そんなときにも、あおいはまだまだキラキラッターで情報収集を続けていた。フォロワーさんに相談している、と聞いたときのいちごの寂しげな顔にも気付かない。
 「ポンポンクレープオーディション、がんばって!」と笑顔のダブルピースで言い残し、いちごは正門を駆け出していった。あおいは返事をできなかった。

 そんなあおいに、掃除のお兄さんが声をかける。「お前、ネットだけに頼って勝てると思ってるわけ?」続けて、「紫吹蘭が誰かの真似をしたり、幸運のアイテムに頼ったりするか?」と叱咤する。あおいが不安もあらわに「でも蘭はレアカード持ってるし」と返せば、「そんなに欲しかったらやるよ……今のお前に使いこなせるかな」と、あおいの好きなフューチャリングガールのレアドレス一式のカードを手渡される。
 掃除のお兄さんが立ち去り、取り残されたあおいは、せっかくレアカードをもらったのにまったく不安が晴れない。

 そしてオーディションの待合室で、あおいは掃除のお兄さんの言葉を反芻していた。蘭はきっと誰かの猿真似をしたりなんかしない。それに、自分は今朝、せっかく応援してくれた目の前の親友に、応援の言葉も返さなかった。せめて、とキラキラッターのリプライで応援の言葉を送るも、いちごからは返信がない。
 後悔するあおいの前で、蘭はノーマルドレスながら、暫定一位の最高得点を叩き出す。――蘭にとって、レアカードは人から言われて使うものではなく、自分の使いたいときに使うものだった。アイドルにはそれぞれ、譲れない美学がある。

 もうすぐ自分の順番が回ってくると言うのに、不安に押しつぶされそうなあおい。
 そのとき、突然控室のドアが開き、「絶対、大丈夫!」という声援。なんと、VIVID GIRLオーディションを受けているはずのいちごがそこにいた。
 「順番早めてもらったんだ。キラキラッターだけじゃ、私の気持ち、伝わらないから」
 そしてあおいを抱きしめ、次に再びダブルピース。今朝と違って、今のあおいはいちごの応援をしっかりと心で受けとめることができた。
 そして、あおいはもらったレアドレスに身を包み、全身全霊のステージを披露。ドレスのアピールポイントの差が決め手となり、僅差で蘭にも勝利。蘭とあおいは、お互いの健闘をたたえ合った。

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 「じゃじゃーん!!」

 ついにできあがった、あおいのポンポンクレープガールのポスターを居室の壁に貼り出すいちご。信じられないような思いで、陶然とそのポスターを見つめるあおい。そこにちょうど、いちごのVIVID GIRLオーディション合格の報も届く。二人は抱き合って喜んだ。

 消灯直前、二人のアイカツフォンの通知が鳴り響き、謎のアカウント「ムーン」からリプライが届く。
 「今夜はクレープみたいな夢に包まれますように」
 ムーンさんが誰なのかは分からなかったが、素敵な言葉だと思った。二人は布団にもぐりこみ、夢の世界に向かった。

 寂しい夜も月はみんなを見守っているように、後輩アイドルのことを見守る先輩がいる。神崎美月は寝室の窓からしばらく月を眺めていたが、やがて自分も眠ることにした。
 
*****

【総論】
 第6話はいちごちゃんの未熟な面が描かれたけど、今回はあおいちゃんの未熟さとその克服がテーマでした。ツイ廃かつネットリテラシーの低いあおいちゃんの明日はどっちだ!
 あと掃除のお兄さんはいったい何者なのか!なんだかんだ言って夜道で歩きスマホをしているが、人のことを言えるのか!
 
  ところで、あおいは何代目のポンポンクレープガールなのだろうか。
 美月さんが復帰すぐポンポンクレープガールになったとすれば、それは中学1年生のときということになる。あおいが冒頭で見せたポスターのモデルはもう美月さんではない。これが最新のポスターだと仮定すれば、今回あおいが襲名した(違う)のは、単純に考えれば第14代目となる。
 ただし、おそらくこの結論は間違いだ。第7話であおいが参加したオーディションは11月19日。仮にポンポンクレープガールが年一で選ばれるとすれば、昨年11月頃美月さんが12代目で、そのまま一年間やっているはずなのだが、そうなってはいない。(背理法的にポンポンクレープガール年一説は棄却される)
 となると、ポンポンクレープガールは一年に一度よりは頻繁に更新されていることになる。 「不定期」というのは商業的に想定しづらいので、半年に一度か、四半期に一度の更新ということで仮定するのが妥当だろう。
 とはいえ、四半期に一度だとすると、ポンポンクレープガールの伝統はまだ3年と少しということになる。これは、初代から二、三人は良いとしても、それより最近のアイドルが名を成したというには、新しすぎる伝統に思われる。
 半年に一度なら、美月さんが第12代目となったのは、一年前の5月頃か、一年前の11月頃という二つの仮説ができる。昨年11月に美月さんが選ばれたなら、今年5月に13代目、あおいは14代目となる。美月さんが12代目になったのが昨年5月なら、11月に13代目、今年5月に14代目、それならあおいは15代目だ。
 だが、美月さんは復帰直後からアイドル界を席巻している。活動再開はスターライト入学と同時の4月からと考えられるので、11月にポンポンクレープガールとなってお茶の間に広まる、というのはおかしいだろう。
 という理屈でいえば、美月さんは昨年5月に第12代目となって、あおいは第15代目という仮定になる。はてさて真実はいかに。

【今日の謎特訓】
 10センチの宇宙。


【今日の美しき刃】


 昼ご飯を一緒に食べる。同席していいかと聞くと一応ツンケンしてみせる蘭だが、もう完全に友達である。



 蘭は好きなものを最後に食べる派だが、好きなものを最初に食べる派のいちごによって、スイートトマトを食べられてしまう。これがこの先30年に及ぶ、仁義なきいち蘭冷戦の始まりであった。

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