2017年7月2日日曜日

飽きたら終わりだ!アイカツ!感想。第8話「地下の太陽」

第8話「地下の太陽」


  ある日ジョニー先生が予告したのは、“センセーショナルスチューデントオーディション”の開催。蘭曰く、「学園長主催で、各学年ごとにその年もっともセンセーショナル、つまり、世の中の注目を集めた生徒を決めるオーディション」とのこと。クラスメイトはみな「今年も蘭がトップ候補ね」とざわめく。しかし蘭の表情は厳しい。なんと、これまで何度も、毎年最終選考で競り合った生徒がいるという。蘭に並ぶほど注目を集める生徒がこのクラスにいただろうか……と、怪訝に思うあおい。
 そのとき、サングラスをかけた一人の生徒が教室に乱入してくる。彼女の名は三ノ輪ヒカリ。抜群のダンスパフォーマンスと歌唱力、類い稀なタレント性を誇るが、スターライト学園の地下にあるスタジオから自身が配信するネットライブでのみ活動し、メジャーシーンには一切登場しないという変わり者。ネットライブは何か月間も開かれ、その期間中は地下から一切出てこず、もちろん授業にも出席しないので、実はいちご、あおいとも同じクラスなのに、二人は出会ったことがなかった。
 「まぶしっ……」と呟きながらサングラスを外す姿に、もうあおいといちごはメロメロ。そしてそう、彼女こそ年に一度センセーショナルスチューデントオーディションで対決する、蘭の永遠のライバルだった。




 自己紹介をしようと声をかけるいちごとあおい。そんな二人を引きとめる蘭。
 「よせ、気安く触ると……」「――火傷するわよ」
 蘭の忠告の言葉を自分で引き取るヒカリ。“地下の太陽”とあだ名される彼女は、ほとんどのアイドルにとっては近づくことさえできない高みから、圧倒的なアイドルの輝きを放つ。
 「すごい!クールアンドセクシーアンドビューティ!」
 あおいの賛辞やいちごの無邪気さに翻弄され、さらにそんな二人が蘭の友達だと紹介されたことに戸惑いつつも、ヒカリは蘭に今年も宣戦布告を叩き付け、教室から出て行った。ヒカリにとっては、蘭以外に張り合う価値のあるライバルはいない。いちごやあおいは、眼中にないのだ。

 ひょんなことからヒカリの地下スタジオの場所に辿り着いたいちごとあおいは、その練習風景を部屋の外からそっと覗き見る。圧倒的な実力を目の当たりにし、感嘆する二人。しかし、休憩のために出てきたヒカリは二人に気づくと、叱り飛ばした。自分のライブはファンのためだけに行う、だからいかに練習といえど、勝手に見ることは許さない、と。
 謝罪と再びの賛辞を伝え、ヒカリからもそれなりに許しを得て地下から戻ったふたりは、ヒカリとの対決に備えてひとりダンスレッスン中の蘭と出会う。ヒカリは、直接姿を現すことはなくとも、誰よりもファンを大切にする。そして、ファンのためなら自らの努力を惜しまない。そんなヒカリに勝つために、蘭もまた自分に追い込みをかけていた。

 その日の夜、いちごとあおいは蘭の部屋の前に特製ドリンクの差し入れを置いて行く。嬉しく思った蘭だが、いかんせん量が多すぎ、結局三人で集まって飲むことになる。初めて蘭の部屋に入った二人は、机の上に置かれたスパイシーアゲハのレアドレスに目を留める。そのカードは、縁あってスパイシーアゲハのトップデザイナーから直接プレゼントされたもの。蘭のまごうことなき、最高の勝負服だった。
 「じゃあ、本番に向けて元気を付ける為に、焼肉ドリンク作ろうか?」
 「いや焼肉はいらない」
 「うーん、なら私が焼肉食べて、精一杯蘭のこと応援する!」
 「それは良いが、食べすぎるなよ。最近少し太ったんじゃないか?」
 蘭の指摘にむくれるいちご、冗談だよと大笑いする蘭。ヒカリのことがあってずっと厳しい顔をしていた蘭が大笑いしてくれたことに、あおいは安堵する。

~~~

 センセーショナルスチューデントオーディション、最終選考当日。控室にいたのは、蘭とヒカリの二人だけ。
 「お互いベストを尽くそう」
 「当然」
 いつもなら、このままフィッティングルームに入ってステージに立つ。しかしこのときヒカリは、もう少し話しておくべきだと感じた。
 「そういえば、ずっと一人でがんばってきた蘭に友達ができたなんて、驚いたわ」
 ヒカリからの思わぬ問いかけに、蘭もふと、自分とあの二人はどういう関係だろうかと、一瞬自問した。
 「友達か……正直、私も驚いている。応援してくれる友達のためにがんばろうと思ったのは、初めてだ。ヒカリにとってのファンのみんなみたいな感じかな」
 微笑みながらそう答える蘭の表情を見て、ヒカリは例年の蘭とは違うと確信した。間違いなく、去年より格段に成長したパフォーマンスを見せるだろうと。
 「蘭、変わったわね」
 「そうかも」
 だが、ヒカリもこの一年間、ファンと一緒に歩み、努力し続けた。負ける気はしなかった。
 「いいんじゃない?……じゃあ、ステージで」
 
 蘭のドレスはスパイシーアゲハの新作。ピンクレッドのワンピースドレスにロンググローブ、網のハイソックスと、華やかでセクシーなコーデ。シューズにはアゲハのモチーフがあしらわれている。
 対するヒカリは、ノンブランドながらアピールポイントの高い星3相当のコーデ。チューブトップにレザースカート、レザーサイハイブーツという、当世風でアクティブな印象。
 課題曲“Trap of Love”のイメージに合わせ、等身大の少女の大人びたセクシーさを演出した。

 オーディションの結果、叩き出したアピールポイントは同点。今年もまた、蘭とヒカリの引き分けだった。

 結果発表に湧く会場を抜け出し、蘭とヒカリは夕陽の下にいた。
 「今年の蘭、今までで一番熱かったわ。アタシが火傷しそうなくらい」
 「また来年、勝負だな、ヒカリ」
 「ええ、また来年ね。蘭」
 今年も、お互いが唯一無二のライバルであると再確認した。気の抜けない相手、だからこそ張り合いのある相手。きっと来年も、思わぬパフォーマンスを見せてくれる。そう信じているから、笑顔で別れられる。
 そして今年もまた、お互いのアイカツを歩み始める。ヒカリは地下へ、蘭は――

~~~

 数日後、いちご、あおい、蘭の三人は、スターライト学園の“スペシャルオーディション”への参加を決めた。二人以上でユニットを組んで出場する形式のオーディションゆえ、蘭もこれまで出場したことがなかった。
 出ると決まれば特訓だ。蘭の指導のもと、いちごとあおいは居室で悲鳴を上げながら猛特訓。

 勉強机の上に置かれた蘭のアイカツフォンの画面には、ヒカリからのメールが表示されていた。
 「スペシャルオーディションだけど、合格するには全員“プレミアムドレス”のカードが必要よ。
どこかで必ず見てる。あたしをがっかりさせないこと。
 ★☆★ヒカリ★☆★」
 
 今も地下で努力をしているに違いない無二のライバルからのメールに、蘭の心も沸き立っていた。
 「よーし!スクワットもう百回!」
 「もう百回!?」
 「やっぱり鬼コーチだー!」
 
*****
 
【総論】
 今回も紫吹蘭がいっぱい出るし、地下の太陽も登場して、切られて焼かれてと大変な一話でしたね。
 蘭はここまでの登場キャラの中ではかなりの実力者だけど、一方で親友を失ったり、孤独な日々を送っていた。そんな蘭もしかし孤高の存在ではなく、丁々発止に渡り合うライバルがいる、ということが提示される回でした。

 ヒカリと蘭は、まぎれもない唯一無二のライバル。おそらくヒカリは、蘭に友達ができたと聞いたとき、内心穏やかじゃなかったんじゃないかな。ヒカリも蘭も、友達を作らない孤独なタイプだと思うし、ヒカリは蘭に愛憎絡み合う複雑な思いがずっとあっただろう。そんな蘭に友達が、と聞いて、ヒカリはおそらく、ちょっと不安になったんじゃないかと。お互いが唯一だと思っていたけど、そうでもなくなっちゃったこととか、友情という路線変更でライバルが惰弱になってやしないか、という不安とか。
 でも、ステージの上で去年より向上したパフォーマンスを披露し、現在の自分と張り合える実力を身に着けていたことで、その友達が蘭の成長に必ずしも悪いことではなかったと実感し、そういう蘭も認めることにしたのかなと。

 まあ、俺が贅言を浪費する必要はないんですよ。つまり百合ですからね。

【今日の着眼】('17年7月3日追記)
 現在中学一年生の蘭が、毎年ヒカリと競っている。また、第5話で描かれた通り、蘭は既に親友との別れを経験している。第5話だけではなんとも言えないが、センセーショナルスチューデントオーディションはスターライト学園主催の学内のオーディション。すなわち、スターライト学園には初等部の存在が推察される。

【今日の美しき刃】
 

 焼肉ドリンク案に苦言を呈す蘭、援護射撃をするあおい。不服ないちご。
 ここでの美しき刃、作画上はもはや完全になまくらである。 

【今日の百合】


 お互いを讃え合う時は、真正面から見つめたりしない。それでも、お別れの前だけは相手の目をしっかりと見据えて、また次の一年間の決意を視線に込める。だからお互い頑張れるし、そしたらもう振り返って名残を惜しむ必要もない。これもまた信頼関係のなせる技ですね。


0 件のコメント:

コメントを投稿