2017年12月28日木曜日

『スター・ウォーズ/フォースの覚醒 (吹替版)』 2015、備忘録代わりの感想。

『スター・ウォーズ/フォースの覚醒 (吹替版)』(エピソード7)を観ました。
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結論:強固なスターウォーズオタクでなければ素晴らしい映画です。見て大丈夫です。
まあ強固なスターウォーズオタクは周囲の評判なんて聞くまでもなく見るだろうし、実際もう2年以上経ってて見てないわけないので、この記事を読んでる人はみんなスターウォーズへの態度は普通だと想定しておきます。

先に自分の態度を表明しておくと、私はレンタルDVDで4,5,6の旧三部作を普通に楽しみ、新三部作の1,2,3で微妙な気持ちになりつつ、7を飛ばして、『ローグワン』を劇場で観て大はしゃぎしたくらいの、普通のアメコミ系映画ファンです。

以下、ネタバレあり。



この『スター・ウォーズ/フォースの覚醒 (吹替版)』 (以下、『エピソード7』、7などと記述)は、スターウォーズシリーズの再スタートであり、そして家族の物語です。
冒頭、いつもの「これまでのあらすじ」的なところでは、旧三部作の英雄ルーク・スカイウォーカーが失踪したことがいきなり明かされ、しかもそのために、銀河は再び混乱の中にあることがわかります。帝国の残党が「ファースト・オーダー」なる組織になり、築かれたはずの平和な新共和国の主流派からは、レイア姫ら主人公勢はすでに離脱してしまっています。まあつまるところが、反乱軍vs帝国軍の構図がまた立ち上がってきてしまったという感じです。(スターウォーズファンに言わせれば、もっと複雑かもしれませんが)

新共和国の主流派は何をしているのか?
ファースト・オーダーの目的はなんなのか?
『エピソード7』ではこの辺はあまり明かされませんが、それは問題ではないのです。
ひとまずここでは、本作の焦点を「6から7の間に何があったのか?」に定めましょう。

そもそも私はこの疑問を、演出によって巧みに抱かされました。

旧三部作を知っている者なら、タイトルロールで「ルークの失踪」、「ファースト・オーダーの台頭」というあまりの変化が提示されたことで、あんなにイケイケで未来への希望にあふれて幕引きしたはずの世界が、結局再び「ファースト・オーダー」=帝国=暗黒面の時代を迎えていることに困惑します。

“ルークはあんなに頑張ったのに、なぜ?”
“もう一人のヒーロー――反乱軍の将軍にして、リーダー・レイア姫ともくっついたハン・ソロはどうなったの?”

そしてこの疑問とともに、私――私たち――は、思えば現実の世界でも、30年経って、素晴らしい映画や画期的に思える出来事がいくつもあっても、やっぱりまだまだうんざりするようなことが続いていて、現実は「『幸せに暮らしました』で 幕は閉じられない」んだ、ということを叩きつけられた気分になる。

ハッピーエンドだったはずが、なんでこんなことになっちゃったんだろう、希望にあふれていたはずなのに、どうして?

という気持ちが、あの世界の人々と、見ている我々の間をつなぐ。

そして話が進むと分かってきます。
ルークは弟子のジェダイ「カイロ・レン」の育成に失敗して彼が暗黒面に堕ちてしまったために、アナキンの育成に失敗したオビ=ワンのように世捨て人になってしまっている。
しかも、そのカイロ・レンはハン・ソロとレイア姫の息子でもあるという。そしてハン・ソロとレイアは今や不仲らしい。

平たく言えば、6と7の間に、ハン・ソロとルークという二人の〈父親〉がカイロ・レンの子育てに失敗してしまったために、銀河系の危機が再び起こっているのでした。

ルークもハン・ソロも、〈父親〉として子の育成を誤ってしまった。
従来の6部作では、基本的には育成を誤ったのはオビ=ワンだったわけですが、今回はルークとハン・ソロの二人がカイロ・レン一人を育てようとして二人とも失敗してる。

「片親」たるルークは、4のオビ=ワンと同じく弟子の育成に失敗して引きこもっている。これはある意味で、私たちの現実の世界で、自分の人生において挫折し打ちひしがれている人々の気持ちでもありましょう。ハン・ソロもほとんど同様です。

こうして、白人の〈父親〉二人が、俺たちはどうすればいいんだろう?と打ちひしがれている。だからファースト・オーダーを止める者もいない。

そこに現れた、ファースト・オーダーを止めようとする新しい子ども。
それが、黒人で、子どもの頃からストームトルーパーになるために育てられた〈子ども〉、FN2187改めフィンでした。
そしてそんなフィンと出会ったレイは、成り行き上ハン・ソロと出会い、彼女もまた、神話のようなジェダイのことを知る伝説的な人物、ハン・ソロに憧れ同行します。

そしてハン・ソロもまた、こうして訪れた〈子ども〉たちの父親役を再び背負い込むのです。人生は続いている限り続けなきゃいけない。だからハン・ソロは老体に鞭打って、ジェダイでもないのに、オビ=ワン役をする。子育ては続けなきゃいけないから。そして自分の過去の失敗した子育ての結果であるカイロ・レンにも向き合おうとする。

ハン・ソロは子育てに失敗したことで、〈父親〉たる自分自身を見失いましたが、そんな彼に再び〈父親〉の役割を思い出させたのもまた、〈子ども〉の存在だったというわけです。

ルーク、ハン・ソロ。
レイ、レン、フィン。
二人の親と、三人の子ども。

そしてこの『エピソード7』は、ルークとレイが出会ったところで幕を閉じます。
ルークは再び〈父親〉となれるのか、レイはフォースとともにある者としてジェダイたるルークの〈子ども〉になれるのか。
それが『エピソード8』の眼目になるでしょう。


血縁によってのみならず、信念・フォースによって結ばれる、ゲゼルシャフト的家族の物語。
7,8,9という30年ぶりの新しい試みが、どのように紡がれていくのか、目が離せませんね。

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